ダイヤモンドオンラインに連載記事が掲載されました(^^♪
今回はいつものビジネスモデルではなく、私のライフワークである宮本武蔵経営学です!
宮本武蔵『五輪書』に学ぶ、不透明な時代を「勝ち抜く」極意 | News&Analysis | ダイヤモンド・オンライン
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こちらのブログでは特別に元々の原稿を以下の通り公開致します
内容はダイヤモンドオンラインとは異なります あわせてお読みください!
<記事タイトル>宮本武蔵の経営戦略: 経営者は時代の「拍子」を掴め
新型コロナの蔓延が止まらずもはや医療崩壊の様相を呈している状況にあります。しかし、こうした状況下でも業績を伸ばしている企業もあります。
そして成功している経営者はよく「運が良かったからです」と言います。運は人間がコントロールできないものであり、時代の流れや風向きともいえるでしょう。もちろんこの経営者の発言は謙遜しているわけですが、確かに時代の流れを捉えて急成長している企業は多いといえるでしょう。
ではこの先行きが不透明な時代にどのようにしたら時代の流れや風向きを的確にとらえることができるのでしょうか?
実は私の愛読書でもある宮本武蔵の『五輪書』にもそのヒントが書かれていると私は解釈しています。この連載では宮本武蔵の著書を基に経営戦略に役立つヒントを探していきたいと思います。なお私は歴史家ではないので武蔵の著書には諸説あることは理解していますが本稿ではそうした点についてはあくまでも私の解釈として述べていきたいと考えておりますのでご了承ください。
宮本武蔵は、吉川英治氏の小説『宮本武蔵』や井上雄彦氏による漫画『バガボンド』で知っている方も多いと思います。諸説ありますが、世界的ベストセラーとなった『五輪書』の他『獨行道』『『兵法三十五箇条』』という著作を残しており、生涯で60余人と対戦して一度も負けなかったとされている剣豪です。武蔵は戦国時代末期の1582年に生まれ、江戸時代初期の1645年に没したと言われています。つまり生死をかけた戦で戦う最後の武士のひとりだったわけです。
江戸時代には武士はかつてのような農業との兼業ではなくなり、都市市民となったわけですが平和な新しい時代を迎えて武士は自らの存在意義を問われる立場であったとも言えるでしょう。
武蔵は生涯のほとんどを大名に仕えることなく生きたいわば「元祖フリーエージェント」のような人物だったのです。
また、武蔵は、「武士は死ぬことと見つけたり」という有名な一文で知られる『葉隠』的な武士道とは全く異なる発想を持っていました。『葉隠』」は江戸時代中期18世紀に山本常朝の口述による武士としての心得をまとめたものですが、当時はすでに天下泰平の時代になっており、武蔵の生きた生死をかけて戦いに挑んでいた武士は存在していなかったのです。むしろ武蔵にとっては「武士とは新しい時代にも生きること」であったといえるのです。
武蔵は、『五輪書』の中で以下のような趣旨の記述をしています。
あくまでも私の解釈であることを再度お断りしておきます。
火の巻では「景気を知ると云う事」として、「景気を知るとは、他人数の合戦の場合では、敵の勢いの強弱・人数・戦場の状況など敵の状態をよく観察して理解したうえで戦略を立て、確実に勝てるコツを把握したうえで先の見通しを立てて戦うこと。
一対一の勝負では、敵の流派を理解し、人柄を見定め、長所や短所を見つけ出して、敵が意図しない技を仕掛けることにより、敵の動揺の程度を読み取り、敵の行動の拍子(呼吸・癖)を知って、こちらから先手を取って戦うことが肝要である。
物事の景気は、智力が優れていれば必ずつかめるものだ。
兵法も同じで、兵法を自在にこなせるようになれば、敵の考えが推察でき、勝つ方法を見つけ出せる機会が多くなる。工夫せよ。」
さらに、地の巻では「兵法の拍子のこと」として、「物事には、その拍子、すなわちタイミング、リズム、呼吸などがあるが、特に兵法の拍子は、鍛錬なくしては体現できない。能の舞、音楽、武芸における弓・鉄砲・乗馬、など全てに拍子があり外してはいけない。姿、形がないものにも拍子がある。例えば、出世する拍子、失脚する拍子、商いの道でも、大成功する拍子、没落する拍子など様々な拍子がある。物事が繁栄する拍子、衰退する拍子の違いをよく見分けないといけない。まず自分に合う拍子を知ることが大切で、相手の拍子に乗らないで相手の拍子を崩すことで勝つ事ができる。」
武蔵が剣豪として一度も負けなかったのは、常に世の中のリズム、動き、流れ、ファクト、目の前にいる相手の動きや癖などを入念に観察し、未来を予測し、自身の軸をもつことで、勝てる相手との戦いしかしなかったことがわかります。
別の言い方をすれば、「世の中の動きをよく観察すれば未来がどうなるのかが分かり、その変化に対応した行動を取ることで勝利を掴むことができる」ということでしょう。
私たちはとかく見たくないものを見ないようにする傾向があります。また興味や関心のないものは、たとえ物理的には見ていても、見たという記憶すら残らないものなのです。
しかし目の前で起きている事実、ファクトのほんの小さな変化をとらえることこそが未来を予測するために重要なのです。
世界的に有名な経営学者であるピーター・ドラッカーは、こうした事象を「すでに起こった未来」と呼んでいます。
拙著「プロフェッショナルシンキング」(東洋経済新報社)でも書きましたが、今起きている事実をよく観察すれば将来どのようになるかは予測できるのです。もちろん全てではありません。しかし多くの未来はすでに起きているのです。つまり、未来を見通す力とは「事実」すなわち「ファクト」を分析する力と言えるでしょう
ドラッカーは「すでに起こった未来は、体系的に見つけることができ、調べるべき領域は5つ。そして社会的、経済的、文化的な出来事と、そのもたらす変化との間にはタイムラグがある」と著書『創造する経営者』の中で指摘しています。
世の中は時間の経過とともに、人口、社会、政治、経済、産業、文化などあらゆる面が変化していきます。その多くは正確な予測が不可能ですが、中には変化の兆候が事前に現れ、比較的容易に将来どうなるのか、予測できる事象があります。その5つとは、①人口構造、②知識の変化、③他産業・他国・他市場の変化、④産業構造の変化、⑤組織内部の変化です。
今すでに起こっている事象と、それらが社会にもたらす変化にはタイムラグがあるので、迅速に今すでに起こっている事象に気が付くことで、ある程度未来を予測することは可能だと言っているのです。
これこそが冒頭で紹介した成功者の「運」を引き寄せる力だと思います。
このように、将来の変化を暗示する予兆を人に先立って見つけることができれば、新たなビジネスチャンスを手にする可能性が大きくなります。もちろん予測なので外れるリスクもありますが、ある程度予測の確度をあげることが可能です。
GAFAMやBATのようなプラットフォーム戦略(R)に基づく巨大IT企業やテスラのような急成長企業は、ビッグデータの収集とデータマイニング、AI(人工知能)による解析において世界のトップを走っています。短期的な個別の事業モデルの構築のためであるとともに、実は企業として常に将来の変化を暗示する予兆をつかみ取って常に進化していくための戦略だと言えるでしょう。
日本企業の経営者にとっても、新型コロナの影響で環境が激変している中において、目の前に今起きている事実、ファクト、データをいかにAIなどの技術を活用して、未来を予測し、新しい時代の「拍子」にあわせて自らが変化していくことが求められているのだと宮本武蔵は教えてくれているのではないでしょうか。
(文=平野敦士カール/株式会社ネットストラテジー代表取締役社長)
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